秘密実験【完全版】



 初めてなのに……


 悠介に捧げるはずだったのに。


 痛みに顔をしかめながら、杏奈は身をよじって逃げようとした。



「動くな、って言っただろ?」


「うぁああッ……!」


 芹沢がナイフを振り下ろし、腹部を浅く切りつける。


 下半身に痺れるような激痛と、腹部の疼くような痛みが混ざり合う。


 白いワンピースに、赤い染みが浮かび上がった。


 芹沢は容赦なく、自身を沈め込んでいく。



「あっ……ひぃい……! ハァ、ハァッ……痛い!」


 このまま下半身が千切れてしまうんじゃないかと言う激痛と、未曾有の恐怖が杏奈に襲いかかる。


 大きな瞳は涙で濡れ、頬は紅色に染まっていた。


 そんな美しく乱れる杏奈の姿に、芹沢真は興奮と欲望を隠そうともせず激しく律動を繰り返した。


 全身が熱っぽく、頭にぼんやり霞みがかかる。


 天井がぐるぐると回る。


 白いワンピースに一輪の花を咲かせながら、杏奈は人形のようにぐったりしていた。


 罰が当たったのかな……?


 悠介や、家族を大切に思わなかったから。


 私が悪い子だから、こんなことされちゃうの?



「ひっ……。うっ……く! うわぁぁああッ……」


 みるみるうちに涙が溢れ出し、杏奈は子供のように声を上げて泣いた。


 両手で顔を覆いながら、足をじたばたさせる。



「ッ……、うるさい」


「うわぁあああんっ……」


「黙れ!!」


 芹沢の怒声が室内に轟いた。


 しゃくりを上げながらも、杏奈は泣き顔のまま彼をじっと見つめる。


 小さく舌打ちをすると、芹沢は荒々しく自身を引き抜いた。


 泣くのに夢中で、痛みなど吹き飛んでいた。



「ひっく……。グスッ……」


 杏奈は横たわったまま、虚ろな視線を宙にさまよわせる。


 太ももから生温かい血が伝い、地面にポタポタと赤い染みを作る。



「……痛かったか? 誰でも通る道だ」


 髪を掻きあげながら、気だるい微笑を浮かべる芹沢。


 ナイフについた血を舐めると、静かに部屋から出て行った。


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