仲良し8人組
亮介はひなの事を知らないと言っていた。ということは、顔が見えたってひながいると思う事はない。
誰か知らない女が自分の家の前で座り込んでいる……。
そう思うだろう。
それ以前に、亮介は……ひなが見えるのだろうか?
電話で会話は出来た。
でもそれだけ。
亮介とこの世界で会うのは初めてなのだ。
タンという足音と共に、黒い革靴が角から顔を出す。
「亮…介……」
無意識にひなの口から漏れでる名前。
グレーのスーツを着こなして、背筋を伸ばして歩いてくる男性に目を奪われる。
いつ会ったとしてもひなの目を奪う。
堤亮介という男は。
亮介の目にひなの視線がぶつかる。
それに気付いたのか、亮介が目を丸くして「えっ!」と声を上げた。
亮介の足が止まる。
亮介の視線は間違いなくひなに向いており、ひなが見えているという事が明白だ。
亮介には、やっぱり見えてるんだ!
私が見えるんだ!
嬉しい思いと、それに伴ってやってくる寂しい気持ち。
見えてるけど、……私の事を知らないんだ。
「あ、…あの……」
そう声を出してみるが、それ以上言葉が続かない。
亮介に助けて貰わないとダメなんだ!
だから先ずは、今日何度も電話した神崎ひなです。って自己紹介しなきゃならないんだ!
そう分かっているのに言葉が出ない。
言わなきゃ!言わなきゃ!
……言わなきゃ!
「亮…介、……助けて……」
必死に紡ぎだしたのは、今のひなの気持ちそのもの。