絶対王子は、ご機嫌ななめ

「政宗さんなんて、もう知らない!」

祝賀会会場に移動した私は円歌ちゃん智之さんと一緒に会場の隅で座り、表彰式での失態を思い出しては落ち込んだり腹を立てたりを繰り返していた。

「まあまあ、落ち着いて。政宗さんも悪気があったわけじゃないんだから。ね?」

円歌ちゃんはそう言って、私の背中をポンポンと優しく撫でてくれる。

「それはそうだけど……」

舞台上に顔を移動させれば、嬉しそうに笑っている政宗さんが目に入った。

「あんな顔の政宗さん見るの、僕初めてかもしれないなぁ」

「たしかにね」

智之さんや円歌ちゃんが言うとおり、舞台上の政宗さんの顔はゴルフクラブでは見たことのない笑顔だけど。

「ふたりとも騙されちゃダメですよ! あの笑顔の裏には、もうひとつの恐ろしい顔を持ってるんだから」

「柚子ったら何言ってるの? 政宗さんは基本優しい人でしょ?」

円歌ちゃんの言葉を聞いて、舞台上に目線を戻す。



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