メガネのヒメゴト
その場にへたりこみそうになる。


1粒のしずくが流れおちた。


ああ、わたしは泣いてるんだな。


どうしてこういうときに雨は降らないんだろう。


夜空には青白い満月が出ていた。


ドラマの別れのワンシーンでは都合よく降ってくれるのに。


降ってくれたら、カッコウがつくのに。


ドラマのヒロインとして。


さよならはいっていない。


こわくていえなかった。


あなたもさよならとはいわなかった。


8年分の気持ちで胸がこみあげてきて、飽和状態になった。


結ばれることは、ないんだな。


あなたの日焼けした左手の薬指の付け根が、常に白い線を描いていたことをいいだせないまま。

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