ミク。
《いま、春が思っているような事、冬は一度も思った事は無いですよ。》

泣き過ぎて咳込んで呼吸困難になりかけた背中をまるで母親のように優しく擦ってくれる珠里夜からそう云われた。

【っ…‥ほんと…?】

まだボロボロと大粒の涙を流したまま聞いて来た陽菜に、彼女は大きく頷いて見せると、幼い恋心を抱いている彼に、こんな事まで付け加えてくる。

《えぇ。もしかしたら、大好き過ぎて結婚したいなんて思ってるかもしれませんね?》

とたん、陽菜は涙を忘れて飛び上がって上半身を真っ赤に染めるなりヘナヘナと力無くベッドに沈んで、えぇ!?どうしよう…どうしよう‥どうしようか!!?と、脳内プチパニックに襲われてしまう。が、そこで彼女が言ったのは落ち着かせる言葉でも、冗談だと云うツッコミでも無く、かなり真面目な声でのオドシ。

《気をつけなさいね春。冬のように大人になり途中の思春期の子は、好きな子を好きなようにイジメたくなるお馬鹿な年頃だから》

耳元での囁き的オドシに何を妄想してしまったのか?宙に眼をやりしばし何かを考えている様子だったが、次の瞬間には急に出してしまいそうになった叫びを飲み込み、最終的には飲み込み過ぎによる酸欠と極度の緊張で眼を回して倒れたが、そんな彼に珠里夜がかけたものは、

《静かにしてくれる良い子は朝寝の時間ですね。》

というズレた台詞と、冷笑と似た微笑みだった。
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