ミク。
午前十時近く、玄関に誰かヒトの気配を感じた陽菜は気絶とも云える朝寝からむくっと目覚めると、栄養不足と昨日治ったばかりの病とで力があまり入らない身体を我慢して、大息をつきながらベッドからいそいそと降りるとその玄関に向かってヨロヨロと走り出した。きっと、彼が帰って来たのだと思ったからだ。

【ユキ、お帰りっ!】

しかし、やっとの思いで辿り着いたそこに居たのは待ち人では無く、下界の人間で云うと三十代、前半と後半くらいに見える見知らぬ女性三人組で、現在自分の育母である珠里夜に向かって数々の暴言を吐いたり悪態をついている所だった

(こっちで秋冬の神様を見たとある医者から聞いたよ!さっさと返しな!まだ女との食事の楽しみ方を教えてる途中だっつってんだろこのアマ!?)

{私等を舐めてる?私はあの方にシャワーの指導をするシャワー係やってんの!それを妖怪のアンタは横取りする気!?}

〈どうせ妖怪だから妖術でも掛けたんでしょ!?あの方にベッドでの作法を教えたのは私なんだから、アンタなんかに普通なびくハズ無いじゃないの!?〉

陽菜は、一体なんの事なのか分からなかった。けれど、あまり良い事ではなさそうな事と、コイツ等のこういう何かが大好きな彼を傷付けて武道会や、危険な討伐なんてものに行かせているんだという事だけは手に取るように分かった。だから、つい悪い事をしてしまいそうな気持ちになって、本当にそれをしてしまおうか否か迷っていたそこへ、上下共黒。所々に重そうな飾りがある服を身にまとった彼が純白の大きな翼を広げて上空から降りてきた。服には半分血が付着していて、前がかなり乱されていた。
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