ミク。
「陽菜。喰ったら一旦出るから」

やかましい声と便乗してしまいそうな自分自身を切り捨てるつもりでユキは静かに呟いたが、既に陽菜の方が周りの折り重なるコソコソ話しに煽られて緊張し、頬から耳先にかけて赤く染めてしまっていた。

【‥あ…‥えと…】

まだ途中のガトーショコラを最後まで食べ切る空きが見付からないくらい食では無い別の何かで胃も胸もいっぱいになってしまった陽菜が店を出る意見に賛成しながら無意識にユキのオトコの欲望を煽り立てるような発言を口にする。

【うんっ‥!ちゅーはだ…だっ、誰もいないトコでして!】

羞恥と緊張で、自分がこの時どれだけ大きな声を挙げて云ってしまったのか彼本人は全く分かってはいなかったが、それは店の奥まで良く通る程のもので、悪まで冷静な皮を被っていようと努めていたユキを顔面赤面させ、店内に居たほとんどの者達にキャー!!わぁ!!という黄色い声を出させ、響かせるのには十分な力を持っていた。

「陽菜…‥‥」

ユキは、本心では望んでいない事だが、いつかもう少し彼が大きくなって恋愛のなんたるかを理解する歳になってから、お嫁じゃなくて友達でいて欲しいなんて云われる日を待つよりも、今、子供独特の感情でお嫁になるなんて云っているそれを終わらせよう。終わらせた方が良い。と考え、店を出たら伝えようと決意する。

「とにかく、食べて?食べたら、教えてあげるから」
< 123 / 171 >

この作品をシェア

pagetop