ミク。
「お嫁は、ほっぺや唇にキスされるだけじゃないって、想像した事ある?」

【‥‥‥っ…】

「陽菜みたいな良い子は…しないね…‥」

だが、彼を攻めるような事を云えば云っただけ。八つ当たるような真似をすればしてしまっただけ、心が惨めになってゆく。だって、本当は好きだから、彼を欲しいだけなのに…‥でも、欲してはいけないのだとも思う。だって、こんなにも素直で、綺麗で、可愛い彼をとうに汚されて汚れた者になり欠けている自分なんかが欲してはいけないのだ、と。だから‥。

「それに、女の子じゃない陽菜が‥お嫁なんかなれるワケないだろッ!」

だから、云ってしまった。彼の幼さから見た夢を無惨に破壊したかったワケでは無かったが、既に手一杯だったユキには、云う以外、考えつかなかった。

「いくら女の子より良い男の子だって、陽菜はやっぱ僕と同じ男じゃないか!そんなの僕が嫁に出来るワケないんだよバカッ!!」

【っ‥!!?】

声を荒げて背を向けた直後、彼が息を飲み込んでショックのあまり硬直した事が分かったが、謝ったり弁解する気にはなれなかった。彼の幼い夢を根こそぎ破壊したんだとしても、これ以上好きになる事も、好きだと云われる事も失くなってしまった方がお互いの為に良いと本気で思ったからだ。が、彼は声をあげて泣き出す代わり、涙ながらこちらが思いもしなかった事を訊ねて来る。
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