ミク。
【っ‥‥、おん、なの子と‥私……何ちがって…ダメ?】

かなり上擦って声が震えていた事から、彼が本当は声をあげてわんわん泣き出したいのを相当な努力で堪えているのだと痛い程伝わって来た。…しかし、だからこそここで優しく声を掛けてあげたり、一度自分の失態を謝ってなだめてあげられる程、ユキはまだ、大人では無かった。

「色々だ!だって女の子は化粧するし、普通男の子は化粧上手い子とか、料理上手い子好きになる。嫁なら姉さん云ってたみたいな事全部出来て当然だし、でも…でも‥陽菜は僕を何も分かってないんだよ!!」

ユキの中に、二番目の育母の元へ引き取られた日の初日の晩に起きたあの、消したくても消えない恐ろしくて、汚らわしい記憶が鮮明に甦り、それと同時にその記憶を塗り替えたい。ほんの一瞬でも綺麗さっぱり忘れられるならという思考が浮かんで来て、生け贄になって欲しいと望んでしまった相手は、やはり、彼だけだった。だが、理性が、イケナイ事だと警告していた。この一線を越えてはイケナイ!と。だが高ぶってしまった感情が云う事を聞いてくれない。……‥ユキは乱暴に、怒りにも似た衝動で彼を押さえ込んであの日の自分と同じようにしてしまおう。この痛みや苦しみを彼にも味あわせてしまえ!と半ば暴君のようになったが、下からじっと見上げてくる瞳により、動きを封じられてしまう。

「ッ…‥!?」

【…ユキ……。】
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