ミク。
とたん…‥がばっ!?と泣き腫らした顔を上げ、ピタリと涙も止めて後ろの珠里夜を振り返った。そして、それをしめたと思った彼女は実に巧みに利用して出し物をやるしかない!と思わせ、やる意外何も無いレールの上に彼をちょこんと乗せてしまったのだった。

《当然でしょう?なんでも良いのに泣いてばかりで腹も括れない。貴方は腐った女の子ですか?》

【…‥違う…私、女の子より良い男の子だもん!】

《では、それが本当なら、良い男の子らしく潔くなさぃ。その辺の大勢の女の子なんか目じゃない程自信を持って出来る事、今の春には何があるの?》

ヒクっと一度喉を鳴らして下向くと、左手でごしごしと少し乱暴に涙を拭い、もぅ一度顔を上げた。だが、既にその時の表情はキリッと引き締まっており、天帝の御前に戻る為に逃げ出そうとしてきた道を引き返しているだけだというのに、一歩進む事に不思議な魅力が彼全体から溢れて、披露の定位置である場所で片膝を折り、再び礼を取った姿は一同の注目を一手に集めてしまうものだった。

【…先程は、大変な失礼を致しました。心から謝罪致します。もし、御許し頂けるなら、化粧箱と舞用の扇子を一組貸して頂きたく存じます。】

そんな彼たっての願いを天帝は聞き入れ、望みの物を貸し出すと、彼はその道のプロでも仰天させてしまう程、薄く、だが、とても魅力的なメイクを少女のような自分の顔に自ら施し、裾の長いワンピースにも見える神衣で左手に扇子を持ち、歌いながら舞を披露した。その時に歌った歌は、クリスマスの結婚式で二人で聞いた恋音ひめ様の“恋バタフライ”だった。
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