ミク。
「~‥分かったからイイ!起きる。」

【…‥ゆ、き?】

「支度するから向こう行ってるコト!」

【…‥‥‥うん、】

なんだかイライラして、ふと口から出してしまったのは半感情的な厳しい物の言い方で、彼は一度ビクリと肩を震わせてすまなさそうにしながらシュン…。と去っていくのを美しい漆黒の瞳のフレームに写しながら、あー…やっちまった。と些か後悔したが、どうにも悶々して止まない行き場の無い理性が邪魔をする。

「ん?待ってた?」

【…‥‥‥うん。】

「先喰ってても、良かったのに、」

支度を終えてテーブルに歩み寄ると出来立てが好きな珠里夜は先に朝食を終え洗い物を冷やして一人ニュースを見ていたが、一方の陽菜は黙って座ったまま何一つ手をつけず両手を膝上に乗せて自分が来るのを待っていてくれて、声を掛けながら椅子に腰を下ろすと交代に立ち上がり、わざわざ一人分だけレンジで温め直してから出してくれた。

「さっき、ごめん。」

彼があまりにも健気で良い子過ぎて、反対に自分はどれだけ未熟で馬鹿なんだと心に自問しながら短く謝罪すると、彼は怒るのではなく静かに首を左右に振ってから

【ううん。ユキ…危ない仕事で疲れるのに、煩く起こしちゃたから…‥】

ごめんなさいっ!何も無い時はゆっくりしたいよね?洗い物とか全部しておくから食べたら寝てて?なんて優しい言葉を掛けてくれる。だから、どうしても高慢になってしまう。彼が可愛過ぎて、彼の全てを絡め取って好きなように独占したくなってしまうのだ。
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