ミク。
「僕は秋冬両秤の神。前に珠里夜姉さんから冬って呼ばれてたから、もし仲良くしてくれるなら、冬って呼んで良いよ?」

いつの間にかまた泣いていたらしく、涙眼で鼻を啜りながらゆっくりと姿を現すと、その子はまじまじと目前で屈んでくれて、眼の高さを合わせてくれて、甘く優しく微笑んでくれている冬を見つめた。

【…………】

姿形がなんて綺麗で、長い髪も艶やかで漆黒で美しく、同色の長い睫毛と瞳もなんて似合っているヒトなんだろうと憧れて、甘い溜息がこぼれる。春は、クラクラする中で彼の名前を呼び、自分の名前を教えてあげようとする。

【冬、私…名前は‥‥】

云い掛けたが立ち眩みに負けて倒れそうになり、崩れ欠けた所を正面に居た冬によって支えられる。

「えっと、大丈夫?」

具合が悪くなったらしく、青白い顔で口を僅かに開けて苦しそうに呼吸をしていた。が、どうしても伝えたかったのか?澄んだアメトリン色の瞳に冬を映しながら名前を教えてくれた。

【私、ね…‥春ってゆぅんだよ。…春神だから、ハル‥】

弱々しく微笑んで、冷たい両手を力無く伸ばして来て、瞳を震わせる。

【…ねぇ、遊んで?…‥春と今日、一緒に居て?】

返事を不安がる涙の粒がヒトカケだけ流れて、彼の可愛らしいラインを描く顎からキラリと落ちた。
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