ミク。
 …‥‥可愛い‥‥‥。と、素直に他人を愛でる情が冷たくなり欠けていた冬の胸奥で華開く。だが、

《また発熱ですね?仕方無いので冬にはまた会ってって約束して貰って、今日は帰りますよ?》

と、拐われそうになる。冬は、まだ待ってよ姉さん!と本気で言い出しそうになってしまったが、とても辛そうに荒い呼吸をしている春が視界に入ると、キュッと口元を結ばざる終えなくなる。…‥そぅ、冬はもぅ十六歳、前後に見える姿形に見合った心に成長していたからだ。が、

【‥いや‥‥やだ!…】

やだヤダ嫌だもんっ!!と子供丸出しな駄々をこねて来たのは他でも無く、小さくて可愛い春だった。

【冬と居るぅ!わたし冬と居るんだもん!帰らないっ‥‥降ろしてお姉様!】

なんて云いながらまたクラッとしたり、声を出し過ぎて嘔吐しそうになったり、でも帰らない帰らないの一点張りな彼を見兼ねてか?珠里夜の方からも冬を誘ってくれた。

《冬、今日これから忙しい?》

「いえ。」

《だったら家に来て下さい。春、言い出したら死んでも譲らない子なんです》

まったく…。と半ば呆れた物言いをする彼女と、来て貰う事への期待が見え隠れするものの彼女が本当に本気で自分を家に連れて行くまで見張ってる!という態度の春を見てしまった冬は、その小さくて可愛らしい容姿に見合わない頑固さや強さがありそうな彼に余計興味が沸いてしまう。

「喜んでお邪魔します。」
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