ミク。
《そう。…それなら少しだけ教えて差し上げます》

そう云って彼女が話してくれた内容は次の通りで、春は単純に身体が弱いのでは無く、人一倍感受性が強い。その為、その時一つ一つ受け止めた物への情などが身体全体に来てしまって体調を崩したり、夜泣きや徘徊、失禁に繋がるのだという事。しかし彼を最初に担当した育母はそこに気付かず、しまいには何故少しも成長しないのかと怒り、その為余計体調を崩してしまったり、激しい夜泣きを繰り返しながら家中徘徊したり、毎日のように失禁してしまい、それについて叩かれたり、泣きじゃくっていると女々しい女子のようだと突き放される悪循環で、全く成長出来なかったようだと教えてくれた。

「そうだったんですか…」

《更に云うともぅ一つ》

やはり育母にも善人と悪人が居て、それによって己が望む望まざるに関わらず色々な物が変わってしまう。自分は最初幸福だったけれど、その影でこの子は‥。という哀れみの情とも呼べる痛みが胸にジワジワと沸いて来て、なんだか親近感を感じていた所で更に、と、見せられたモノに、冬は一時目が釘付けになる。
ちょっと長めに延ばしているストレートな前髪を真ん中で掻き分けた彼女の手の先、額の中心にはパール色に輝く小さなダイヤ形の石のような物がくっ付けたのでは無く、嵌め込まれているのでも無く、自然に皮膚の一部としてそこにあったからだ。
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