そっと鍵をかけて。



ごそごそという物音で目が覚めた。

ベッドサイドに置いてあるケータイの画面を見れば、まだ9時だ。

遅く起きたつもりだったが、土曜日の9時なんて、私にしたらまだ夜も明けきらぬ早朝に等しい。


もう一度夢に落ちるか、覚醒しきらぬ頭でぼんやりと考えていると、

物音の原因、ベッドの脇で着替えていたらしい彼が私が起きたことに気づいて近寄ってきた。


「おはよ、まだ早いから寝てな」


「…はよ、どこいくの?」


隣はまだ暖かくて、彼も先ほど起きたのだとわかった。

ろれつのうまく回らない私を見て、彼がくすりと笑ったのが分かった。


「野球。一緒にくる?」


そうか、だから白いパンツに黒いベルトなんて合わせてるのか。

危うくセンス悪いよ、と忠告しそうになったことを頭の片隅で考えながら、

彼の問いかけについて考える。





もし、私が行くと言ったらどうするのだろう、と。

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