そっと鍵をかけて。


「…行かない」


彼が寝ていた枕に顔をうずめてくんくんとにおいを嗅いでいると、またも彼が笑った気配がした。

大きくて冷たい手が耳にちょっとあたって、優しく頭をなでる。


「うん。ゆっくり寝てな。」


優しい手つきが心地よくて、まどろみの中に落ちそうになりながら、

考えることはいつも同じだ。




ああ、神様はイジワルだ。




別に特に熱心に神様を信じている訳ではないけれど、

毎週、金曜の夜は祈るのだ。明日は雨でありますように、と。

彼がこの社会人野球を楽しみにしていることは知っているけれど

私だって2人でまどろむこの時間を楽しみにしているのだ。

野球が中止になるように雨を願うくらい、許してほしい。


「じゃあ、行ってくるね」


そう言って彼が出ていくと、むくりと起き上がった。





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