そっと鍵をかけて。

くるりと部屋を見渡して、バックと袋を持って靴をはく。


「…っと、これも…」


危なく忘れるところだった、キーケースから小さな金属片を外して、

靴箱の上のガラスボウルに落とした。


高く響いた音が、なんだか寂しそうに聞こえて、笑えた。


腕の時計を見れば、あと30分もすれば彼が帰って来る時間だった。

タイミングよく、スマホがバックの中で震えた。

少し迷って、青い丸をタップする。


「なあに?」


『あ、起きた? 今野球終わったよ』


聞き慣れた、優しい声。


『あと30分くらいで帰るからね。』


予想通りの言葉に、思わず笑みがこぼれる。



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