グッバイ・メロディー


「季沙は洸介くんのこと、男として、恋愛感情をもって、好きなんだよ?」


えーそうなの?とてきとうに返しかけて、いやいや待って、と踏みとどまる。だけどわたしが返事を考えるより先にみちるちゃんのほうが口を開いた。


「夏祭りいっしょに行けなくて腹が立ったのも、ほかの女としゃべってるとこ目撃して目を逸らしたのも、ラジオを聞いたあと直に会って声が聴きたいと思ったのも、週の半分はいっしょに寝てるのも、ごはんを作ってあげたいと思うのも、甘えてくるのをかわいいと思うのも。

――それはぜーんぶ、季沙が洸介くんに“恋”をしてるからなんだよ?」


ちょっとした愚痴とか、小言とか、ひとりごとみたいにしゃべってきたささいなことまで。恐ろしいほど細々とした瞬間を拾い上げ、掘り返されてしまったら、いきなり心臓がばくばく暴れだした。

もしかしたら不整脈かも、なんてとぼけたことを思えるくらいの余裕もないし、そんなおばかさんにもなれないよ。


「そ……そうなの?」


だけどとっさに口からこぼれ落ちたのはなんともまぬけな一言。


「いや知らないけどさ」

「ええっ、どっちなの?」

「それはあたしが決めることじゃないでしょ。自分の胸に手をあててよーく考えてごらんよ。すぐにわかるんじゃない?」


言われるがまま胸に手をあてる。ちょっとさわっただけで、いつもの2倍くらいのスピードで心臓が脈を打っているのが、たしかな振動として伝わってきた。

< 300 / 484 >

この作品をシェア

pagetop