グッバイ・メロディー


「これから洸介くんのまわりには、いまと比にならないほどたくさんの女が寄ってくるだろうねえ」


グレープフルーツ味のチューハイを仰ぎながらみちるちゃんが言った。


「もしかしたらいまでも、まさにこの瞬間にも、あのコの隣を虎視眈々とねらってる女だっているかも」

「う……」


たしかに、あの学祭ライブがあってから、こうちゃんについて聞かれることはかなり増えた気がする。

これまでぜんぜんしゃべったこともないような同級生のコとか、名前も知らない後輩、普段は関わりのない先輩にも、たまに話しかけられて本当にびっくりする。


聞かれる内容は様々でも、要約すると結局だいたい同じだ。

“瀬名くんは、どういう人なのか”。


あまいたまごやきのギタリストではなく、ひとりの男の子として、みんなこうちゃんのことを知りたいんだ。

そう思うと、なぜかいつもうまく答えられないの。


「洸介くんだって男だからね、いつかきっと自分好みの女を選ぶはずだよ? デートして、家に呼んで、手をつないで、チュウして、そしたらその先まで」

「そ、それはぜったいヤダ!」


立ち上がってしまったのはほとんど条件反射だった。


だって、いやだよ。

こうちゃんの優しく濡れた目が誰かを見つめて、あのきれいな指が誰かに触れて、ぎゅっとされたときの甘い香りを、わたしじゃない誰かが感じるんでしょう。


「そんなの……想像するのもやだ」

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