グッバイ・メロディー
「ふーん、あっそー」
べつにわたしだって、記念日をものすごく大切にしたいタイプというわけでもない。
それでも、1年目というのはけっこう大事かと思っていたよ。
せっかく土曜日に当たるし、どこでデートしようかな、なに食べようかな、なんて勝手なプランまで妄想しちゃうくらい。
べつに、いいけど。
こうちゃんにとってその日がその程度なら、わたしにとってもその程度にしておくから。
「……あ」
突然なにかを思い出したのか、はっとしたように息を漏らすと、こうちゃんは短く息を吸った。
息をのみ、大きく鳴った喉の音がこっちまで聞こえてきた。
「あ」だって。
本当に忘れていたんだ。
「季沙」
なんだか機嫌をとるみたいな響き。
それを聞いた瞬間、なんとか収められそうだった感情が、さらにむかむかしてどうしようもなくなる。
いまさらなにを言ったってもう遅いよ。
ていうかもう、なんにも言わないでほしいよ。
「ごめん、季沙」
そのゴメンはとても逆効果なんだよって、なにかの教科書にでも教訓として書いておいてくれたらいいのに。
「べつにわたしなんにも言ってないよ」
「ごめん」
わざとそっぽを向く。
背後で、こうちゃんがスタンドにアコちゃんを置く気配がした。
きっと数秒後、彼はこっちにやって来て、うしろからわたしを抱きしめると、ダメ押しの「ごめん」を言うのだろう。
考えるだけでいやだな。
そんなことをされたらもう、修復不可能なほどにむかついてしまう気がする。