グッバイ・メロディー
「なにかあったら、シンプルでいいの、ただいつもみたいに『こうちゃん』って呼んであげてくれないかな。きっちゃんにそう言ってもらうだけで簡単に元気100倍になるから。まったく単純明快なやつだよねー!」
わたしの、世界でいちばん大好きな人を育てた手のひらが、ぽんぽんと頭を撫でてくれている。
清枝ちゃんは知らないかもしれないけど、あきれないでずっとわたしの傍にいてくれているのは、こうちゃんのほうなんだよ。
だけど、もう、だめかもしれない。
いつだって全部こうちゃんのせいにして、わがまま放題のわたしは、そろそろ愛想尽かさるかもしれない。
今朝、玄関を出るとき、マフラーのむこうのくちびるは、わたしに別れの言葉を告げようとしたのかもしれない。
たかだか記念日をすっぽかされたくらいで。
あんなに謝らせて。
あんなに悲しい顔をさせて。
いつも、それ以上のものを、惜しみないほどに貰っているくせに。