グッバイ・メロディー


ふと、黒いベッドに投げ出していたスマホがぶるりと短く震えた。

手に取ると、みちるちゃんから動画が送られてきていた。


『風邪っぴきガールへ』


からかうような一言に添えられていたのは、あまいたまごやきのステージ、ギタリストのこうちゃんを映した、1分半の映像。


食い入るように見た。

何回も何回もくり返し再生した。


そのうち、やっと止まりかけていたはずの涙が、再びぼろぼろ流れはじめた。


エレ吉くんに、ギー子ちゃんに、ギタ美ちゃんに、アコちゃんに、こんなに嫉妬しているというのに。

やっぱりわたしは、なにをしているときよりも、ギタリストのこうちゃんをいちばんかっこいいと思うんだよ。



そう、すべての始まりは10歳の冬。


最初はただ、6つの弦を鳴らしているだけだった。

それでも無性にかっこよくって、何度も何度も、もういっかい弾いて、もういっかい鳴らしてとしつこくお願いするわたしに、こうちゃんは困り果てながらも要求に応えてくれていたっけね。


そんなこうちゃんは、いつしか本格的にギターの勉強を始めて。

コードやタブ譜の読み方はもちろんのこと、その当時に流行っていたJポップ曲だって、わたしがお願いすれば簡単にコピーしてくれた。


学校で嫌なことがあったとき、お母さんと喧嘩したとき、ほかにもいろいろ、どれだけへこんでいようとも、こうちゃんの指先が弦を(はじ)くと、全部がちっぽけに思えたんだ。


それはきっと、いつだって、こうちゃんにしか使えない魔法だった。

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