グッバイ・メロディー


暗がりのなか、急いで部屋を出ようとしたら本棚に足をぶつけた。

衝撃でなにかがおもいきり床に落ちる。

そのはずみで、パッとそれの電源が入った。


こうちゃんの17歳の誕生日にわたしがプレゼントした、デジタルフォトフレームだった。


煌々と光る液晶に、かわるがわる映し出される写真たちは、面倒くさがりな幼なじみにかわってあらかじめわたしが入れておいたデータだ。

アキくんとの写真。トシくんとの写真。ヒロくんとの写真。4人での写真。
脇坂さんやみちるちゃんと映っているものもある。


ぼうっと眺めていたら、途中で入れた覚えのない写真が現れ始めた。

これは、はじめてのワンマンライブのときのもの、そして炎天下フェスに出たときのもの、学園祭でのスペシャルライブのときのもの、それから……。


きっとこうちゃんが自分で入れたのだと、すぐに理解した。


昔から、写真は撮るのも撮られるのも、あまり好きじゃなかったはずなのに。

電子機器を触るのなんか得意じゃないはずなのに。


こうちゃんがどれほど“あまいたまごやき”を大切に思っているのか、誰より知っているという顔をしておきながら、わたしはぜんぜん知らなかったのかもしれない。


そして、数分後、埃ひとつない液晶の上に、大粒の雨がぼとぼとと降り注いでいた。

< 460 / 484 >

この作品をシェア

pagetop