グッバイ・メロディー
手のひらのなかに現れたのは、いつ終わるのか不安になるくらいの、たくさんのわたし。
なんだかとても幸せそうに笑っている顔。なにが気に入らないのかぷくーとふくれている顔。数学の課題と闘っている死にそうな顔。アイスを食べるうれしそうな横顔。超絶まぬけで目も当てられないような寝顔。キッチンでなにか煮込んでいるうしろ姿。屋台の街並みを歩いてる浴衣姿。学校にむかう制服の背中。
本当に、本当にたくさんのわたしが、小さな箱のなかにぎゅっと閉じこめられている。
こんなのいつ撮ったんだろう。
たしかになんとなく記憶があるようなのもあるけど、ほとんどぜんぜん、カメラをむけられた覚えがないよ。
「しかもぜんぶピンショット……」
いっしょに写真を撮ろうと言っても、こうちゃんって本当に嫌がるの。
俺はいい、と言っていつもするりとフレームアウトする。
だけど、これを見て、改めて思うよ。
やっぱりふたりがいいって。
こうちゃんが隣にいてくれないとさみしいって、写真のなかのわたしが、言っている。