グッバイ・メロディー
「――季沙嬢?」
扉のすぐむこうで待ちかまえていたのは、こうちゃんでも、ほかの3人でもなければ、みちるちゃんでもはなちゃんでも脇坂さんでも、誰でもなかった。
「こん、ばんは!」
とっさに挨拶すると、相変わらず少年のような雰囲気の関谷さんは、オバケでも見たかのように目をまんまるに見開いた。
そしてニッと口角を上げ、うれしそうに笑う。
こないだテレビで見かけたときよりも、少しだけ髪が伸びている。
「こんばんは。体調は大丈夫? みんな心配してるよ。ところでものすごく顔が赤いけど、もしかして熱が」
「あっ! 違うんです、これはそうじゃなくて!」
ただ単に厚着して走ってきたからで。
まごついているわたしを見て関谷さんは少し笑うと、そっと額に口元を寄せてきた。
嫌な感じのしない、男の人の香水のにおいが、ふわりと鼻をくすぐっていく。
「ところできみの姿がなかったからか、ずっと瀬名少年の元気がなかったんだ。問題なければすぐに顔を見せてきてあげてほしいんだけど……」
歌をうたうことを生業としている、なんとも形容できない素敵な声がささやくように言い、ちらりと背後に目くばせをした。
こっちへ向かってくる人々の流れのずっと奥、何メートルも離れた先に、その姿はあった。
わたしはこうちゃんを一瞬で見つけられる。