明日も晴れ

いつの間にか縮まった距離を保とうと、少しずつ少しずつ左側へと動いてみた。



左側にはくすんだ緑色のフェンス。所々に蔓性の草が絡みつき、小さな白い花を点々と咲かせている。
花の名前は確か……、なんとかカズラ。
思い出せないからいいや。



延々と続くフェンスの向こう側の線路を、ものすごい勢いで迫ってくるのは新快速。通り過ぎるのと同時に、びゅうっと風を巻き上げて私の前髪まで掻き上げる。



押さえようとして伸ばした腕が、今泉君の腕に触れた。瞬間伝わった熱は、さっき感じた通り、この陽射しに負けないほど。



慌てて引っ込めたけど、今泉君はさっきよりも私に迫ってきてる。



左肩が私の後ろに回って、体を重ねてくるみたい。今泉君は右側に押している私の自転車を傾けて、距離を縮めてくるばかり。



胸がざわついてくるじゃない。



前方から、一台の車が近づいてきた。
車は私たちが歩いているのとは反対側の、住宅地沿いの歩道の白いラインを侵食しながら走ってきて速度を落としていく。


< 3 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop