美狐はベッドの上で愛をささやく
紅さんの家にあるバスルームは、大人3人くらい余裕で入れてしまうほど広い。
黒と白のタイルで覆われている中は、とてもシックで清潔感がある。
天井からはオレンジ色をした白熱灯が、よりシックな雰囲気を醸(カモ)し出していた。
父と一緒に住んでいた家のお風呂はヒノキの香りがしたけれど、ここは薔薇の香りに覆われていて、なんだか不思議。
まるで紅さんの中にいるみたい。
……そっか……。
このバスルームの薔薇の香りは、紅さんと同じなんだ。
薔薇の匂いはわたしの思考を奪っていくし、髪を洗ってくれる手はすごく優しくて、思わず体の力を抜いてしまいそうになる。
でも…………。
「紗良ちゃん、肩の力抜いて? ずっとそのままだと疲れてしまうよ?」
「……っつ!!」
そんなの、ムリに決まってるっ!!
ただでさえ見窄らしい貧弱な体をしているのに……。