美狐はベッドの上で愛をささやく
声も、口を押えていなければまたさっきみたいにおかしな声を出してしまいそうになる。
だから、コクコクと何度もうなずいて紅さんに意思表示をした。
わたしが何回もうなずくのを見た紅さんは、手元にあったシャワーに手を伸ばした。
わたしの汚い髪を伝うお湯は熱くないし、ぬるくもない。
とても気持ちがいい。
わたしは思わずうっとり目を閉じた。
そうすると感じるのは紅さんの手の感触。
……すごく優しい。
そうしたら、目頭が急に熱くなって、涙が出てきてしまった。
だって、汚らわしいわたしには、こんなに良くしてもらう資格なんてない。
「紗良ちゃん?」
どうやら泣いていたのがバレたみたい。
泣き声なんて漏らしてないのに、紅さんはすごく鋭い。
泣いちゃいけない。
手の甲で乱暴にゴシゴシと目を擦(コス)った。
……それが、間違いだと気がついたのはそのすぐあとで……。
やっぱりわたしは馬鹿だ。