美狐はベッドの上で愛をささやく

微笑んだような……。


そんな感じ……。


可愛い……。



耳をヒクヒク動かす狐があまりにも愛らしくて、さっきまでの恐怖を忘れてしまったわたしは、ついつい狐に微笑む。


ペロリ。

そうしたら、また唇を舐められた。



その時に匂ったのは、薔薇の甘い香り……。



そっか、この狐……。

紅(クレナイ)さんと同じ匂いなんだ。



だからかな、こんな真っ暗闇の世界なのに、全然怖くない。


紅さんと同じで優しい……。



「お前も、優しいんだね……。ありがとう」


わたしを受け入れてくれる紅さんも、この狐も……なんて優しいんだろう。

なんて……あたたかなんだろう。



実感すると、目頭が熱くなって、涙が溢(アフ)れた。


狐はわたしの頬に流れる涙を掬うようにして、舐めてきた。


それがとても心地いい。




わたしはクスリと笑って、大きな狐の背中に腕をまわした。


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