美狐はベッドの上で愛をささやく
パアンッ!
黒だった蜘蛛の装甲が赤い火花のように輝きながら散っていく……。
まるで散りばめられた赤い宝石の数々が無数の色彩を放ち、光を屈折しあって、夜色の殺伐とした公園を覆っていく……。
それは、とても綺麗な光景だった。
輝く赤い光が舞う中、蜘蛛が倒れていた場所に、真っ黒な塊があった。
目を凝らしてたしかめてみると、それは人間の形をしている。
……真っ黒で容姿もわからないけど、たぶん、霊体に付け込まれた人間だ。
「数日前に亡くなった遺体だろう。何者かが、この人間を器にして黄泉帰(ヨミガエ)りをさせたんだ……」
「黄泉帰り?」
わたしは聞いたことのない言葉に反応し、紅さんを見上げる。
「霊媒師ならできる芸当でね、自分以外の、しかも霊力も持たない人間の死体を媒介にして、霊体の意識を入れ、乗っ取る禁忌(キンキ)の術だ。
これが出来るのは、恐ろしい霊力を持った何者かだ」