美狐はベッドの上で愛をささやく
「そう……」
その霊能力者も、わたしの魂を狙っているんだね……。
だけど、もうそんなことは関係ない。
だって、わたしはこれから紅さんに魂を奪われるんだから……。
わたしはすべてから目を逸(ソ)らして地面を見つめた。
こんなに苦しくて悲しい思いをしているのに、もう涙さえも出てこない。
それはきっと、自分の中で紅さんに奪われることを受け入れたからだ。
俯くわたしの体に、紅さんの影が映る。
わたしは紅さんを受け入れるようにして、そっと目を閉じた。
すると、わたしの体がふんわりと浮いた。
そうかと思えば、紅さんに横抱きにされる。
紅さんはそのまま振り返りもせず、公園の敷地を出た。
たぶん、ここで魂を奪うと色々と厄介なことになるから、誰にも邪魔されない場所に移ろうとしたんだと思う。
わたしは何も見ないよう、
感じないよう、
想わないよう、
紅さんの腕の中で、
……そっと、目を閉じた。