美狐はベッドの上で愛をささやく

「あ、笑った。その方がずっと紅兄(クレニイ)の花嫁さんらしいわ」

にっこり笑う真赭さん。

そこで、わたしはある事実を思い出した。


『ある事実』っていうのは…………。




「真赭さんっ! 紅さんを好きって言ったこと、嘘だったの?」


「ごめ~ん。紅兄があんなに口説いても全然気づいていないみたいだったから、つい……」


紅さんが言うとおり、どうやらわたしは本当に、真赭さんに嗾(ケシカ)けられたらしい。

真赭さんは舌を出し、悪戯(イタズラ)をした子供のように肩をすくめた。




「真赭さまっ! 若の花嫁様になんということをされたのでございますかっ!?」



「うっさい。生成はあたしが割ったコップを拾ってればいいのよ」


「そ、そんな……ひどいでございますぅううっ」


「男のクセに泣くなっ! わずらわしいっ!!」


真赭さんの言葉に傷ついたんだろう生成さんは、モコモコのカーペットの上に腰を下ろし、両足を横にそろえると、嗚咽(オエツ)を漏らし、泣いた。


< 275 / 396 >

この作品をシェア

pagetop