美狐はベッドの上で愛をささやく

一瞬、生成さんの車のドアは自動なのかと勘違いしてしまうほど、すごくタイミングが良すぎた。


だけどそれは違っていて、いつの間にか運転席から出た生成さんが、ドアを開けてくれたんだ。


生成さん、真赭さんには散々言われているけれど、実はとっても紳士さんなんだよね。



そう思うのって、失礼なのかな?



そんなわたしたちの服装は、っていうと――。

長袖のシャツにジーンズといった、いたってラフなものだった。



……なんだけど、ふたりともそういう服装なのに、まるで礼服を着ているみたいに見えるのは、容姿がとても綺麗だからだ。



なんだか居づらいと思ってしまう。

だって、これから紅さんが働いているところに行こうとしているのに、見窄(ミスボ)らしいわたしはこの服でいいのかって思う。


踏み出した足は止まってしまう。




そうしたら、生成さんがわたしの背中を押した。


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