美狐はベッドの上で愛をささやく
でも、わたしの中では何事もなかったようにはできない。
――消せない罪を埋め込んでしまった。
「わたし……出ます」
やっぱりわたしはこんな綺麗な部屋にいてはいけない。
膝を立てて出ていこうと決意する。
「待ちなさい。ここから出てどこへ行こうというのだい?」
そうしたら、わたしの両肩を倉橋さんの両手が抑えた。
わたしをふたたび座布団の上へと座るよう、促(ウナガ)す。
わたしはどこに行ってもみんなの邪魔をする。
どこにいてもいけない。
いったい、どこに行けば邪魔にならないだろうかと考えていると、倉橋さんが口を開いた。
張りのある声が、静かな空間を破る。
「紗良君、実は君の力を借りたいんだ」
倉橋さんがわたしを頼っている。
それはきっと、わたしの体質と関係があるんだろう。
だけど、わたしは人を傷つけることしかできない役立たずな人間だ。