美狐はベッドの上で愛をささやく

紅さんならきっと、わたしよりもずっと相応(フサワ)しい花嫁さんが現れる。

だから、その方がいい。


わたしが紅さんの幸せを邪魔をしちゃいけないんだ。


わたしがみんなに出来ることは、『生きる』ことでも『死ぬ』ことでもない。

この世界から『消える』こと。


それこそが、わたしに示された道なんだ。


今なら、それがよくわかる。



だから……だからわたしは……。




「わたしでよければ倉橋さんの大切な人を甦らせるお手伝いをさせてください」



「紗良くん……」


「ただ、ひとつだけ……お願いがあるんです。

最後に……紅さんの顔が見たい」


わたしのこの霊力で、もしかすると紅さんの傷を治す手伝いが出来るかもしれない。





それで……傷が癒(イ)えた紅さんは、わたしじゃない、もっとずっと素敵なお嫁さんを探して、幸せになってもらうんだ。


だから……。



だからね、


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