美狐はベッドの上で愛をささやく

苦しいとか、

悲しいとか、



思っちゃいけない。




これが一番いい方法なんだから。





「紗良くん、私がこんなことを言えた義理でも何でもないが……泣きたい時は泣いてもいいんだよ?」



それは、痛みに蝕(ムシバ)まれていくわたしの体を、毛布でくるんでくれるような、そんな優しくてあたたかい、倉橋さんの声だった。




どうして……。


どうしてみんな、わたしみたいな化物に優しくしてくれるんだろう。



「っひ……っふぇっ」


倉橋さんの優しい言葉を合図に、目にたくさん溜めていた涙が、ボタボタとこぼれ落ちていった。




「ふっ、ぅぁぁあああああああああっ」

紅さんと出会ってから1ヶ月が過ぎた、静かな秋の夜長――。





わたしは大声を出して、泣いた。


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