美狐はベッドの上で愛をささやく
自分が決めたことすらも守れないなんて。
わたしって、ほんと、どこまでもダメな奴なんだから……。
わたしは小さく首を振り、ふたたび意識を女性に向けた。
そうすると、わたしの意識が視界と一緒に少しずつ、暗闇に溶け込んでいく……。
これで終わり……。
これで、紅さんとは、完全に会えないんだ……。
あらためて、わたしがそう実感した時だった。
「紗良!!」
それは、中性的だけれど、とても緊迫感のある声。
優しくって、とてもあたたかい――あの人の声。
「……っつ、紅……さん!?」
わたしは遠ざかっていく意識を戻し、洞窟の入口へと目を向けた。
それと同時に、倉橋さんも声がした方向に、ロウソクが乗っている燭台(ショクダイ)を向け、照らす。
オレンジ色の光に照らされたそこには……。
赤茶色の髪をした彼の姿があった。