美狐はベッドの上で愛をささやく

倉橋(クラハシ)さんに寄り添うようにして、杏子(キョウコ)さんが微笑みを浮かべて立っていた……。




「紗良君、ありがとう」




倉橋さんは穏やかにそう言った。


隣にいる杏子さんもお辞儀をして、ふたりはゆっくり、消えていく……。





……よかった。

倉橋さんは、ちゃんと杏子さんと一緒になれたんだね。




「よかった……」

目尻からスルリと流れるのはあたたかい涙。


胸が熱くなって、ギュッとしめつけられる。




「よかったね……」



言ったわたしも、消えていくふたりと同じように、微笑みを浮かべていた。


そして、わたしはまた目を閉じる。




静かに涙を流しながら……。


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