美狐はベッドの上で愛をささやく

……くれないさん。



「くれないさん……わたし……は……」


本当は……。





「うん?」




離れたくない。ずっと傍にいたいっ!

でも……わたしといれば、紅さんは不幸になる。


わたしがまた、紅さんを傷つけてしまうかもしれない。



言えない。

本当のことは言っちゃいけない。


やっぱり、わたしは紅さんから離れるべきなんだ……。



言いかけた言葉を飲み込み、わたしは口を閉ざす。





「紗良、余計なことは考えなくて良い。わたしは君を欲している。ただそれだけなんだ」





ダメ。

甘い囁きに耳を貸してはいけない。


必死に拒絶するわたし。


それなのに……。


「愛している」


「……っつ!!」


紅さんはまた、わたしに愛を告げた。




卑怯だ。

紅さんは卑怯。


わたしが想っている貴方に愛を告げられたら、もう抵抗なんてできないじゃない。


< 387 / 396 >

この作品をシェア

pagetop