美狐はベッドの上で愛をささやく

「人間の体というものは『魂』と、その魂が入る『肉体』という器があるんだ。


眠りは魂と体が唯一分離する時間でね、魂は人が眠っている間に、常に異世界――つまりはパラレルワールドを体現し、器としての体が目覚める時間まであらゆる時空を旅するんだ。


体から離れた君の魂はおそらく、魔物が巣食うパラレルワールドへと行ってしまったんだろう。


……パラレルワールドというものはね、器の中にある脳の状態によって決まるんだ。


もし、器が正の感情、つまりは喜びや楽しいといった気持ちがあるならば、魂はそういうパラレルワールドへ進む。


だが、もし、器が負の感情を抱いていれば、マイナスのパラレルワールドのみにしか魂は進めないんだ。


だから紗良ちゃん、君が見たアレは、君のお父さんではない。


何より、奴が放っていた波動は人のものではなく、異物そのものだったからね」



紅さんが言うように、夢の中のあれは、お父さんじゃない?



本当に?


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