さくらへようこそ
第3話~残暑

3-1.嵐を連れてきた男

8月も終わりに近づいてきた夕方のことだった。

「ここか」

『ニコニコ横町』の看板を見あげると、男は呟いた。

看板をくぐり抜けると、
「確かこの辺に『さくら』があったと思ったんだけどなあ」

男は周りを見回した。

まるで昭和の世界にタイムスリップしたような光景が目の前に広がっていた。

男は手元にある手書きの地図に視線を向けると、
「この辺に『さくら』があるのは確かなことなんだよあ」

そう呟いた後、手書きの地図と目の前の光景を見比べた。

(これは誰かに道を聞いた方が手っ取り早いかもな)

そう思った男は近くにあった家のドアに手をかけた。
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