さくらへようこそ
男は美桜の前に歩み寄ると、
「その鰆」

美桜の手にあるビニール袋を指差した。

このビニール袋には先ほどかってきた鰆が入っている。

「その鰆、僕が目をつけていたものだったんです。

先に買うものがあったので後から買いに行こうと思ったら、すでにあなたが買い占めてしまった後だったんです」

「か、買い占めたって…」

言い方を考えればそうなのかも知れないが、少し言い過ぎのような気がする。

「ですので、僕に譲ってもらえませんか?

1匹だけで結構です」

この様子だと、男はあきらめるどころか、1歩も譲らないようだ。
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