さくらへようこそ
(困ったな…)

美桜は頬に人差し指を当て、考えた。

せっかく買った旬の魚を手放すのは惜しいところだ。

だけど、男は譲歩の姿勢を見せない――いや、見せる気はないのだろう。

ふと、美桜の頭にある考えが浮かんだ。

「今夜辺りに、私の店にきてくれませんか?」

そう言った美桜に、
「はい?」

男は聞き返した。

「私、『ニコニコ横町』と言うところでちょっとしたバーを経営しているんです。

あなたがそこへきていただければ」

「ば、バーって…」

美桜の思わぬ提案に、男は戸惑っている。
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