いつもので。


額からじんじんと熱が広がっていってる。

キスしたことあるのに、なんで額にキスされただけでこんな風になってるの。


「名前を呼べたご褒美。もう一回呼んだらこっちにもしてやる」


きれいな指先がすーっと頬を滑ってぞくりとした。

わたしはして欲しいのだろうか。

でも恐怖からくるぞくっではないことは自分自身でわかっていて、目の前にいる彼はわたし以上にそれをわかっていそうだった。

すごく意地悪そうに笑うクセに、向けられた眼差しが優しくてどんどんのめりこんでしまいそう。


「…篤、さん」


ふわふわとした思考の中で、彼の名を呼ぶとわたしを見つめる瞳が細められた。


「かわいいやつだな」


満足げに笑むと宣言通りに頬に唇が触れた。


「…っ」


ピリピリと痺れにも似たような感覚にぴくりと体が震えた。


「反応も俺好みだ」


恥ずかしくて顔が近付いたときにぎゅっと目を閉じたことを言っているらしい彼は口の端を上げて、反対側の頬にも口づけた。

どうしよう、完全に彼のペースになってる。

…それがいやじゃない自分が怖い。


「…すず」


「は、い」


「俺はすずが好きだと言ったぞ」


だからわたしにも言え、と瞳が言っている。


「……理由もなく、好きと言っても伝わりますか?」


人のことを言えない。

彼が直感と言ったのとあまり変わらない。

背も高いし、かっこいいけどそれが理由っていうのはなんだかしっくりこない。

それらはきっかけでしかなかったように思える。


「ああ。余分に年くってるしな。それに、おまえはわかりやすい」


「……すきです、篤さんが」


あまりはっきりとした言葉にはなっていなくて、出た声は思ったよりも小さいものだった。

それでもふたりきりの静かな部屋の中ではちゃんと届いていたみたいで、嬉しそうに笑ってくれた。



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