いつもので。


だから今までの彼氏ともキス止まり…。

20歳すぎてるんだから、もっと自然に篤さんを受け入れたかった。


「…泣くな。今日はもうなにもしないから」


顔を上げた篤さんは苦笑して、目の端にたまった涙を指先で拭ってくれた。


「…今日は…?」


ややビクつきながら尋ねると、「バカ」と言われた。


「好きな女が手に入ったんだから、手ぇ出すに決まってるだろ」


よしよしと頭を撫でられて、怖いと思ったクセに篤さんに求められて嬉しいと思う自分もいた。

きっとわたしの初めては篤さんにあげるのだとぼんやり思う。


「…おまえ、唇じゃなかったとはいえ、キスには抵抗しなかったよな」


「え…」


「おまえ、処女だよな」


「う…」


「どうせならキスもとっとけよ」


…無茶を言わないでくださいっと言おうとしたけど声にはならず、奪われるように口づけられた。


「一回りも年上の男を誑かすな」


キスの合間に囁かれた言葉に胸がきゅんとなった。

誑かすなんてことをした覚えはまったくないけど…誑かされてたんだ、篤さん。


「…これからはおまえの全部俺のものだ」


もう、この数時間で頭も心もぜんぶが篤さんでいっぱいになってるのに、それでも足りないとばかりにキスが続く。


触れるだけのものだったのに、うまいこと誘導されて大人のキスになって

苦しいくらいのキスに思考が麻痺しそう。


「ま、って…苦しっ」


キスの合間になんとかそう言って彼の胸を思い切り押した。

息苦しさからは逃れられたけど、不機嫌な顔つきになった彼に小さくなることしかできなくなる。


「あの、もう少し手加減してもらえませんか?」


こんなに上級なものを求められてもわたしは応えられない。


「手加減、ね…」


少しだけ考える素振りを見せたあと、閃いたと言わんばかりの笑みを向けられた。

…いたずらっ子のような、でも聞くのが怖い。


「…好きな女を自分好みに育てられるってことか」


「!!」



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