いつもので。
彼の顔なんて見る余裕もなくて俯いてたのに、俯いていてもつないだ手を見てたら恥ずかしくなって、どうしようもなくてぎゅっと目を閉じた。
「ひ、ざは無理です。…重い、し」
「そうか?見た感じ軽いくらいだと思うけど」
のどがからからだ。
声が出ないのはそのせいなのか、今の状況にいっぱいいっぱいだからなのかがわからない。
でも軽くないってことは伝えなきゃと思って首を横に振った。
「あの、からかってるならもう手を離してください」
のどがからからの状態で出した声は思っていたより掠れていた。
それでも言わないと、わたしがだめになりそう。
隣にいて、手をつないだだけで、わたしの中のすべてが彼でいっぱいになっていく。
「…なんでこの年になってからかってまで部屋に女を連れ込まなきゃならないんだよ」
声で不機嫌になったことがわかった。
「だ、って、さっき好きかどうか聞いたら、眉間にしわできてました」
不機嫌になった彼の威圧感はすごい。
早く距離を取りたい。
こんな近くにいたら威圧感に押しつぶされちゃう。
「…この年でそんなぺらぺら言えるか。優河じゃあるまいし」
不機嫌だった声が少し和らいで、それでも少し棘が残ってるような気がする。
「……すず」
「…は、い」
「いい加減こっち向け」
そうは言われても…
「無理、です」
ありえないくらいどきどきしてるし、たぶん顔も耳も真っ赤だ。
「なら押し倒すぞ」
「え……ちょ、向きます!向きますから」
危ない、本当に押し倒されかけた。
「押し倒されとけばよかったのに」
「…押し倒さないって言ってたじゃないですか!」
だから部屋に上がったのにっ
「やっと見たな。話終わるまで俯くなよ」
思い通りにことが進んだ彼がニヤリと悪そうな笑みを浮かべた。