恋色カフェ SS集
「よかった……彗が帰ってなくて」
「煕さん……」
涙が零れる。
「ずっと寂しい思いをさせててごめんな」
「……忙しいの、わかってるから」
私をくるりと自分の方に向かせて、店長は私に優しくキスを落とした。
「これ、彗に」
見れば、いつの間にか店長のデスクの上にテイクアウト用のカップが置かれている。
「ホットチョコレート……?」
「ひとり分残しておいてたんだ」
ひと口飲み込む。濃厚な香りと上品な甘さが口の中に広がった。
「おいしい……」
私はカップを置き、さっき引き出しに入れた箱を取り出した。
「これは……私から」
「トリュフ? 彗が作ったの?」
嬉しいな、と本当に嬉しそうな顔をして、店長はひとつ、口に入れた。
「ん、おいしい!」
「本当ですか?」
「俺は嘘は言わない」
隠していたことはたくさんあったけどね、と心には浮かんだけど、もちろん口には出さなかった。もうそれは過去の話だ。