西暦2308年
2.DREAM or REAL?
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「父さん。あと、3分だよ。2308年6月6日まで。一体なにがあるの?」
「………お前の、曾々々々おじいさんが、今は無い日本国の首脳をしていた時の、負の遺産が姿を現すんだ。」
父さんはひどく哀しそうな瞳で空を見つめていた。
その空を見上げても、僕には空中自動車のライトやネオンの光以外に見えるものなどない。
だけど父さんは、その空の更に向こう……宇宙の彼方を見つめるように空を見て、僕の問いに応えてくれた。
「揚羽…。」
「なに?」
空から目を離して父さんの方に視線を移すとグイッと体を引っ張られてその大きな体に抱きしめられる。
「明日から、どんなことがあっても、父さんの名前を出しちゃいけないよ。いいね?」
「……?うん…。」
「女の子には優しくするんだぞ。」
「父さん、何言ってるの?」
「いや、なんでもないよ。……ごめんな…。」
その瞬間だった。
頷こうとした僕の耳には、鼓膜が破れてしまいそうな程の轟音と、理科の時間に使うようなレーザーの何倍も強い光が視界の隅に写った気がする。
抱きしめられて押し付けられた父さんのお腹のせいで、何が起きたのかなんにもわからない。
「揚羽。さよならだ。」
「父さん…?」
「いいか。父親の名前を聞かれても絶対に父さんの名前を出すんじゃない。」
その時、なんでかわからないけど父さんの着ている服を思いっきり掴んで父さんを引き止めなくてはならない気がした。
寧ろ、このまま父さんにしがみついて離れないようにしなくてはいけない気がした。