強引上司のターゲット
握った手はすぐに離されたけど、あたしの鼓動は速いままいつまでたっても治まらない。
な、なんなんだこの甘さは…?!
付き合ってるわけでもないのに!
これがアメリカンスタイルか?
この前おでこにキスされた時、アメリカの習慣は無いって言われたけど…、やっぱりこんな風に考えちゃう。



そんなことを考えてるうちに、外の景色に懐かしさが湧いてくる。


ここ…
そっか。課長はあたしたちが住んでいた場所に向かってるんだ…!
光くんが引っ越してから数年後あたしもこの町から引っ越した。


「懐かしい」


ポツリと呟いたあたしに、「あぁ」と頷く課長は少し切なげに見える。

そして、公園の隣に車を停めると「少し歩こう」と外からドアを開けてくれた。


この公園で過ごした頃のことはたくさん思い出したつもりでいたけど、こうやって来てみると、まだまだ色んなことが浮かんでくる。

ブランコで二人乗りしたこと、滑り台から落ちてほっぺが血だらけになったこと、桜の木の下で、降ってくる花びらを掴む競争をしたこと。


「っふふふ!」


とっても穏やかで朗らかな気持ちが自然と笑顔にさせてくれる。


「何笑ってんの?」


そう言う課長は、スーパー笑顔だ。




だけど。
そのスーパー笑顔で続く課長の話にあたしは…今日で最後にしようと、決めた。
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