確信犯
聞こえたハズなのに。
私の声も、言葉も。
「…娘の、八重は……柿原八重だ」
何とか、望みに縋りつこうと。
愚かしい言葉を溢す会長。
「――私には2つ、名前があるんです。“お父さん”」
――足掻けばイイ
苦しんで、のたうち回ればイイ
「5歳で生き別れたアナタの娘『八重』は、生まれ育った海外から――日本人の、子供がいない和菓子屋夫婦に引き取られたんですよ」
白澤有雅の、従姉だった女。
発狂して死んだ、白澤有雅の愛人。
柿原雅(カキハラミヤビ)は私の母。
「和菓子屋のご夫婦は養女の名を、付けたかった子供の名に改名しました。『八重』から『美森』にね」